「難病」と「指定難病」の違い―定義と概要

目次

難病と指定難病について

難病とは、治療が難しく、日常生活に大きな影響を与える病気の総称です。

たとえば、筋ジストロフィーは筋肉が徐々に衰えていく病気で、歩行困難や呼吸困難になることがあります。また多発性硬化症は中枢神経系に影響を与え、痛みや疲労感、視力障害などを引き起こします。潰瘍性大腸炎は消化管の潰瘍を引き起こし、激しい腹痛や下痢を伴うことがあります。

また難病のほかに「指定難病」があります。こちらも多くの方が日常の中で耳にした方があると思われます。

難病も指定難病も、一般的には治療が難しくて治りにくく、長期間の療養が必要な病気を総称してそう呼ぶのだろうと認識をされている方が少なくありません。呼び方に若干の違いがあるぐらいで、おおまかに言えば同じ部類に入るのだろうと思えるからです。

確かにそれは間違いありません。

ですが同じ難病を指す言葉ではあっても、厳密には定義のうえで違いがあり、医療費助成の対象になるか・ならないかにも関わってくるのです。その部分も含めて、まずは難病に関する法律から見ていきましょう。

「難病法」が施行

2015年1月、難病の患者に対する良質かつ適切な医療の確保および療養生活の質の維持向上を図るため、「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」が施行されました。

難病の患者が社会参加への機会を確保されることや、地域社会において尊厳を保持しつつ、ほかの人々と共生することを妨げられないことを旨とする基本方針が掲げられたのです。

法の制度化にともない、難病に対する疾患研究を中心的としたこれまでの取り組みに加え、福祉制度も含めた難病対策が講じられるようになったことは大きな前進であると感じています。難病が発病する機構や治療方法に関する調査・研究に対して、国が主導して推し進めるための足がかりの1つともいえるでしょう。

難病法の中で、新たに医療費助成の対象とする疾患を「指定難病」と呼ぶようになりました。

指定難病は個々の疾病ごとに診断基準があり、病状の程度に応じて重症度分類が設定されています。病状が一定程度以上と診断された場合、あるいは軽症高額に該当した場合は、審査を経て医療費助成の対象と認定される場合があります。

認定されると特定医療費指定難病)受給者証が交付され、指定難病の治療のみにかかる自己負担分が助成対象となります。収入などに応じて毎月の自己負担上限額が決められ、医療費が上限額に達した場合、同月内においてはそれ以後の費用徴収がなくなります。

高額な医療費負担を強いられていた難病患者にとって、医療費軽減の恩恵は大きなものです。

難病法による「難病」の定義

では難病法における難病の定義から見ていきましょう。

〇「難病」の定義
難病とは次に示す項目をいいます。

(1)発病の機構が明らかではない

(2)治療方法が確立していない

(3)希少な疾病

(4)⾧期に渡り療養を必要とすること

※ただし、がん、精神疾患、感染症、アレルギー疾患等、個別の施策体系が確立している疾患は含まれない

病気のメカニズムがわからず、根本的な治療法も確立しておらず、非常に稀な疾病で、発症してから生涯に渡って⾧期的な治療が必要とされるものを難病と定義しています。がんや精神疾患等、難病法以外の法律によって施策が講じられているものについては適用外となります。

難病法による「指定難病」の定義

次に指定難病の定義です。

〇「指定難病」の定義

指定難病とは、難病の項目で挙げた(1)~(4)の定義と合わせ、次の項目もすべて満たすものをいいます。

(5)患者数が本邦において一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しないこと

(6)客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が確立していること

(5)の人口の0.1%程度に達しないことは、総務省統計局による2025年4月現在の国内の総人口が約1億2千400万人とのデータから、その0.1%にあたる約12万人程度が目安となります。ただし必ずしもこの人数が適用されるわけではなく、基準の適用にあたっては個別具体的に判断を行うとされています。

(6)の客観的な診断基準とは、血液検査や画像検査などの結果とともに、視診、聴診、打診、触診などの理学的所見など、関連学会などで承認を受けた基準や専門家の間で一定の共通認識が得られているものを指します。

指定難病と診断されることが前提

医療費の助成対象となるのは(1)~(6)を満たす「指定難病」と診断された場合です。(1)~(4)の「難病」の定義のみでは助成対象とはなりません。

ただし、指定難病と診断されただけでは医療費が助成される受給者証は交付されません。

あくまでも指定難病と診断されたことを前提として、

  • 重症度分類
  • 軽症高額

のどちらかに該当し、審査を経て認定された場合に受給者証が交付されます(重症度分類と軽症高額については別の項目で詳しく解説したいと思います)。

難病対策と経費問題

これまでの難病対策としては、調査研究の推進や医療施設の整備、患者の医療費の負担解消などが挙げられ、難病の病因特定や病態の解明研究が進められてきました。

しかしその背景には懸案事項もありました。医療費の経費負担問題です。疾病数が年々増加し、対象患者数も増える一方となり、難病対策にかかる費用が膨れ上がりました。

この問題に対して、持続可能な社会保障制度の確立を図るために、医療費助成の財源に消費税を充てられるようにするなどの措置が講じられるようになりました。

あわせて治療や調査研究を推進するとともに、訪問看護や療養生活の環境整備事業などを拡充し、公平かつ安定的な制度が確立されるようになったことは、国の難病対策によって一定の効果が現れた証であるといえます。

国が取り組む難病対策の基本理念の中には、難病の治療研究を進め、疾患の克服を目指し、地域で尊厳を持って生きられる共生社会を目指すと提言されています。

それを踏まえ、難病患者が社会生活を営むうえで継続的に支援の手が差し伸べられるよう、これからも国の施策に希望を託してまいりたいと考えています。

サイト運営者である私自身、指定難病患者の1人であり、現在も治療の日々を送っています。

そんな私のおよそ30年間に渡る病気治療、および携わってきた仕事について、〝三患(さんかん)〟を背負いながらも仕事と治療に懸命に生きる、人生の挑戦記録を綴った『三患奮闘記』ペーパーバック版および電子書籍版で出版しましたのでお知らせいたします。

タイトルにある三患とは、私が患っている尋常性乾癬乾癬性関節炎そして指定難病の強直性脊椎炎の完治できない3つの病から名付けたものです。

難病を抱えながらも私がこれまで経験してきた現実を、時には「患者目線」に立って、またある時には「労働者目線」の立場となってありのままを記しています。

指定難病患者である私と同じように、難病を抱えて治療をされている方、また病気によって苦しい現状に身を置く方々へ。お互いに少しでも共感できるものがあれば幸いです。

サンプルも読めますので下のボタンからどうぞ。

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